北九州市はITインフラ事業の“ブルーオーシャン”

JBSテクノロジー株式会社

北九州市に進出した企業へのインタビュー、今回は日本ビジネスシステムズ(JBS)の子会社としてIT事業者へITインフラ技術サービスを提供する、JBSテクノロジー株式会社様のご紹介です。

同社は2016年7月、北九州市の九州ヒューマンメディア創造センターに「九州事業所」を設立しました。設立後もコンスタントに社員数を増やし、現在は約40名近くの方が在籍しているとのことです。事業所を構えておよそ1年半経過した今、採用面での苦労や施策、そして九州事業所の役割についてどのようにお考えか、九州事業所所長・新居昭生様にお話を伺いました。

北九州市はITインフラ事業の“ブルーオーシャン”

まずは、御社の事業内容について教えて頂けますか?

弊社の事業領域は、ITサービスの基盤となるネットワークインフラや、サーバー・ストレージ等、のプラットフォーム部分。分かりやすく言うと、皆さまがご利用しているITサービスがのっている土台の設計や構築、運用を提供している企業、というイメージでしょうか。
多くのIT企業が提供しているようなコミュニケーション等のサービスではなく、私たちはそのサービスが安全・快適に動くための環境を整えるべく、設計・構築・システム運用を行っています。

北九州市に拠点を置くことになった経緯を教えてください。

2016年より、総務省の指示のもと全国規模での自治体のセキュリティ標準化がおこなわれました。これにはインフラ部分の抜本的な見直しが含まれていましたが、九州にはインフラに特化した企業はほとんどありません。
このような場合、通常、多くのIT企業はスタッフを九州へ派遣してインフラ関連の案件に関わりますが、今回のような全国規模の大きな案件になるとどうしても人手が足りなくなります。東京から人員を派遣したとしても、予想外の事態に対応するリソースが足りない上、交通・宿泊費など本来の業務以外の大幅なコストがかかってしまいます。

こうした点からも、「九州にもインフラに強い企業があれば」というニーズは以前よりありました。そこで東京以外にも北海道、名古屋、大阪に拠点をもつ弊社は、その実績と経験から「九州でもインフラに特化したエンジニアサービスでやっていける」と勝算をもって、2016年に北九州に事業所を設立したのです。九州事業所では、ここ一年ほど自治体のセキュリティ標準化の一環としてインフラ事業に数多く携わっています。

ただ、私たちのサービス提供先は自治体となりますが、直接のお客様はIT事業者です。福岡市や北九州市に拠点を置いて、自治体のセキュリティ標準化の案件に携わっている企業に対し、エンジニアのリソースとして関わっています。

「地元で技術を生かしたい」というUIターンの受け口に

九州事業所を設立後、ギャップや苦労したことはありますか?

採用に一番苦労していますね。特にインフラ系のエンジニアは圧倒的に数が少なく、人材の流動性もありません。九州にインフラに特化した企業が少ないという点は、東京に比べればはるかに大きなビジネスチャンスがありますが、一方で即戦力となるエンジニアの中途採用市場は非常に小規模です。人材確保については、あと二年ほど続く大きな課題となりそうです。

資料を拝見すると人材は順調に増えているようですが、どのような施策を取っているのでしょうか?

中途採用ではUIターン希望者が多いですね。東京や大阪などの大都市圏で採用した「九州に戻りたい」というUターン希望者に非常に助けられている状況で、これは大都市圏に本社・支社がある強みかもしれません。

先ほど“二年”と申し上げたのは、2017年にようやく九州で企業説明会を開催し、九州の学生に対して働きかけることができたためです。ここから順調に採用が進めば、東京本社で研修やOJTを一年間受けた新入社員が、再び九州へ戻ってくるというひとつのサイクルができあがります。

UIターンの社員からは、どのような声があがっているのでしょう。

大手IT企業のインフラ事業部で働いていた方の話ですが、仮に九州への異動願いを希望しても「九州にインフラの仕事は無いから」と取り下げられてしまう事もあったそうです。ですので、その希望を叶え、受け口になれたことは喜ばしく思いますね。地元でインフラの技術を生かして働きたいという方々から「Uターンで就職できてよかった」という声はよく聞きます。

九州で学んでいる学生さんも同様で、「せっかく学んでも希望する就職先が九州にはない。だから東京へ行く」という方や、逆に「九州で仕事がないから、その専攻には進まない」という方もいます。製造業が盛んだった九州において、現在も工業高校や工業専門学校の存在感は根強いと思います。インフラの会社が地元の九州にあることで、インフラエンジニアを目指す学生さんもさらに増えていくのではないでしょうか。

クラウド化の利点を生かし、北九州の存在感を社内外にアピール

北九州市からのサポートには、どのようなものがありましたか?

北九州市の方には非常にお世話になっています。
企業立地支援として雇用補助金などをご支援いただいたり、新卒採用面では北九州市主催の合同説明会もご案内いただきました。さらに各大学を訪問する際には、就職課へアポイントを取ってくださり、同行して私どもをご紹介してくださるところまで。「ここまでやってもらっていいのかな」と思うくらいで、本当に感謝しております。
私の少ない経験ですが、ここまで企業誘致に関して熱心でいらっしゃる自治体はなかなかいらっしゃらないのではないかと思うほどです。

事業所を構える九州ヒューマンメディア創造センターも北九州市からご紹介いただきましたし、韓国から日本への就職を希望している方の説明会や、韓国の大学視察ツアーのご案内もいただいております。採用については、互いにWin-Winの関係が築けていると思っていますね。

北九州に拠点を置いたことによるメリットはありますか?

弊社のインフラ事業におきまして、新しいサービスの拡張や今後の展開として「東京ではなく北九州で」という選択肢は増えましたね。
特に、いま私たちが関わっているインフラ事業はクラウド化が進み、モノとして機械やシステムの近い場所に拠点を置く事が必須という環境では無くなりつつあります。この流れが進めば地価や人件費を比較的抑えられる場所で人材を教育し世に提供できます。そうした未来の視点で考えると、九州事業所は大きな利点になると言えるのではないでしょうか。

社員の「働きやすさ」「暮らしやすさ」という面はいかがでしょうか?

北九州は何もかもが近くてコンパクト。衣食住と遊び、全てが一時間圏内にあります。私個人は趣味でゴルフをやっているのですが、山口県まで1時間かからずに行けるのでプライベートも充実しています。レジャー・観光スポットは周囲にたくさんありますし、新幹線を利用すると鹿児島までたった2時間で足を運ぶことができるので、土日や休日も充分楽しめるのではないでしょうか。また平日の仕事後に、ソフトバンクホークスの試合に行くことも可能ですよ(笑)
東京にも非常に多くの選択肢がありますが、九州にも不自由しないだけの数はあります。
実は私も九州出身。東京から九州へ約30年ぶりに戻ったこともあり、Uターンの方の感性も理解できますので、良い意味で通訳になれるかもしれません。

今後、九州拠点での目標とすることはなんでしょうか?

インフラビジネスをやっていくうえで、今後さらに充分な供給能力が必要になります。具体的には現在在籍している社員、約1,000名に対し、北九州はその10%を占める人数をと考えているため、5年間で100名規模に拡大するという目標を立てています。2016年7月の立ち上げから約1年半で(※取材は2017年12月に実施)現在は36名が在籍。比較的順調に増えていると感じていますので、引き続き採用面に力をいれて目標を達成したいですね。

インフラ事業ではIT事業者の方々への技術支援を軸にしつつ、九州事業所がJBSグループの中で、エンドユーザーの皆様に提供するサービスの発信拠点の一つとして、存在感を出せるようにしていきたいと考えています。JBSグループでもっとも力を入れている事業のひとつに、マイクロソフト製品のソリューション提供という分野があるんですね。メールシステムやSkype等のビジネスコミュニケーションツールなど、さまざまなサービスでエンドユーザーの業務を円滑に、快適にしていく提案・導入を進めています。
たとえ物理的な距離があっても、クラウド化が進めば、できることはどんどん増えていきます。九州事業所はその中心となって、グループのなかでも存在感を突出させていきたいですね。

そして外部に対するJBSのプレゼンスが上がることで、若手の方々に対しても「九州でも、こんなビジネスをしている会社があるんだ」と訴求できる、そんな事業所になれればと考えています。

<プロフィール>
新居昭生(あらい・あきお)
JBSテクノロジー株式会社九州事業所 所長
1990年から現在に至るまで、ITインフラ事業に携わってきた。
外資系での営業、高校時代の同級生との起業、沖縄での会社設立等を経て、今回の事業所開設を機に、JBSテクノロジーに入社。30余年ぶりに北九州市へUターン。
北九州市小倉北区出身
早稲田大学政治経済学部卒、1961年生まれ。

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