【特別インタビュー】北九州市 松岡環境モデル都市担当理事 ~環境モデル都市・北九州市の挑戦~

北九州市環境モデル都市担当理事 松岡 俊和
聞き手: 北九州市産業経済局誘致課 主任 小園 理恵

インタビュー

【環境モデル都市の意義とは】

小園: 先ず、環境モデル都市の意義、目指すものをお聞かせいただけますか?
松岡: 低炭素社会が一つのキーワードとなっていますが、私は低炭素社会を「社会の変革」と捉えています。高度成長時代は街の発展や人の幸せが従来のものさしで図れたかもしれませんが、低炭素社会は、単なるCO2削減という問題だけでなく、既に成熟した現代社会で本当の意味での豊かさや幸せを問いかけていると考えています。つまり、環境モデル都市は、新しいものさしでまちづくりを行うことを宣言したのです。環境モデル都市の意義は、社会変革の発火点になること、自分たちがまちづくりの新しいあり方を世の中に示していくことだと思います。

【リーディングプロジェクト~見える化・感じる化プロジェクト~】

紫川エコリバー構想

小園: 現在の進捗状況は?
松岡: 変革の第一歩として、新しいものさしを実感として伝える必要があります。言葉だけでは本質が伝わりにくく、とかく否定的になりがちです。このため、世の中に伝えていくために「見える化・感じる化プロジェクト」を立ち上げました。
1つ目は、『紫川エコリバー構想』があります。市街地の中に低炭素社会をどう組み込んでいくのかテーマとしており、ハード面の整備だけでなく、そのハードを街の賑わいや憩いにどう活かしていくのかというソフト面も含めて、エコを切り口とした新しい中心市街地のあり方を示します。現在ハード整備が始まったところです。プロジェクトには、企画段階から様々なセクターが参加し、目的を共有化しながら一緒に実行していくことを目指しています。

「低炭素」「自然共生」「資源循環」の3要素がそろう若松・響灘地区

「低炭素」「自然共生」「資源循環」の3要素がそろう若松・響灘地区

松岡: 次に、若松・響灘地区で行われるプロジェクトを2つご紹介します。響灘地区は大型工場が立地する2,000haの産業用地ですが、環境の3要素である「低炭素」「自然共生」「資源循環」が揃う場所です。これまで同地区では「北九州エコタウン事業」で資源循環に取り組んできました。新エネルギーの集積やエネルギーの企業間連携が進む同地区を2つ目のプロジェクトとなる『次世代エネルギーパーク』として整備し、市民の皆さんにエネルギーを身近に感じていただくための視察見学を行っています。次のステップとして、新エネルギーを含めた多様なエネルギーを地域のインフラとしてさらに活用し、企業の皆さんに新しい産業立地のあり方を提案できればと思っています。
3つ目のプロジェクトとして同地区で『響灘・鳥がさえずる緑の回廊』創成事業を進めています。市民の憩いの場として活用するために地域の皆さんや企業による植樹活動を進めているほか、来年度は廃棄物処分場だった場所に日本最大級のビオトープが完成します。

松岡: 4つ目は、低炭素モデル街区づくりを進める小倉北区城野地区については、コンパクトシティ・高齢化社会の考え方の中で、歩いて暮らせる社会というだけでなく、街のエネルギー供給をどう支えるのか、街の資産の共有化について考えていきます。カーシェアリングも緑も共有財産です。タウンマネジメントに住民が参加する、つまりCO2や耐久化だけでなく豊かさをまち全体で参加しながら考えていくという考え方です。
5つ目は、エネルギーに特化した八幡東区東田地区の『東田グリーンビレッジ構想』です。2003年頃から既に構想は始まっていますが、昨年近隣工場で発生する副生水素をパイプラインでつないだ水素ステーションが完成しました。太陽光発電については、計画分も含めると街中だけで1,000kW発電する予定です。メガソーラーと言うと大きな発電所があるイメージだが、私たちはタウンメガソーラーと呼んでいます。
小園: 各戸で発電した電力をその家だけでなく、町全体でマネジメントするということでしょうか?
松岡: 街全体で基幹エネルギーと新エネルギーの全体最適と部分最適も行い、需要と供給の双方向でエネルギーマネジメントしていくことを目指しています。これが正に「スマートコミュニティ」です。この実現が、見える化・感じる化につながります。皆でタウンマネジメントする社会の実現です。

【2050年に向けた地方自治体の役割】

松岡理事

松岡理事

小園: 2050年に向けた地方自治体の役割は?
松岡: 国関係の委員会等に出て、いつも強く感じるのは、地域、地域と言われながら、依然として中央集権的であることです。例えば、電気自動車や次世代住宅の普及について、地域にどう割り振るかという国から目線で議論されているように感じます。こうしたやり方は持続的ではないと思います。
社会が受け入れる基盤を地域で作って初めて、国の進める目標が受け入れられます。国の対策がきちんと受け入れられる社会作りという最も重要な役割を果たすのが地方自治体です。それぞれの地域で社会作りの多様なビジョンを持つには、地域の知恵と工夫がとても重要です。
ちなみに、北九州市は産業中心の都市なので、産業インフラをまちづくりにどう活かすか、どう共生を図るかが重要なポイントとなります。もう一つ重要なのは、次世代産業育成のビジョンを持たなければならない点です。
小園: 企業の研究部門や戦略部門のほとんどは東京にあり、地域での次世代産業振興の難しさを感じます。環境モデル都市の取組みを通じて、北九州市を次世代産業のメッカにする道筋についてはどのように考えますか?そして、最後に企業の皆さんへのメッセージをお願いします。
松岡: 中央集権の背景には、地方自体がこれまで工夫をしてこなかった反省もあります。東京の文化がベースになり、地方の文化が失われていったのではないでしょうか。環境モデル都市は新たな価値観・文化の創造です。企業の皆さんには北九州市の文化創造に参加いただき、地域とのつながりを強めてほしいと思っています。
製品は世の中のニーズ志向で作られると聞きますが、企業には行政や市民とのコラボレーションを通じて社会に必要とされる技術のマーケットを創っていただきたいと思います。何度も言いますが、環境モデル都市は、まちづくりそのものです。先ずはリーディングプロジェクトの中でトライする場として社会実験の環境を整えています。こうしたプロジェクトを通じて、市民や企業の皆さんとまちづくりについて考えていきたいと思います。
小園: どうもありがとうございました。

【あとがき】
環境モデル都市についてはこれまでも企業の皆様に情報提供してきましたが、次のステップ「北九州市に来ればどんなことができるのか」を提示する段階に来ていると思います。
現在、北九州市では、低炭素化技術をキーワードに「研究開発~実証事業~事業化」という各場面に応じた支援の充実を進め、名実共に世界に誇れる環境モデル都市を目指しています。企業の皆様も北九州市の壮大なまちづくりである「環境モデル都市」に参画しませんか?

北九州市の環境モデル都市に向けた取組みついては、以下をご参照下さい。
http://www.city.kitakyushu.jp/pcp_portal/contents?CONTENTS_ID=23032

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