エレクトロニクス業界の世界市場に向けて、北九州から革新的な技術を発信

太陽インキ製造株式会社

北九州市八幡西区で、2015年10月に北九州事業所を開設した太陽インキ製造株式会社。プリント配線板(PWB)の表面を覆うインキの製造において、世界でトップクラスのシェアを誇る化学メーカーです。
PWBはパソコンや携帯電話などのIT機器やデジタル家電などに内蔵されており、ソルダーレジスト(SR)と呼ばれる同社の製品は、PWBの回路パターンを保護する絶縁膜として重要な役目を果たしています。
北九州事業所設立から3年、順調に事業を伸ばし続けている同社の取締役北九州事業所長 兼 開発推進プロジェクトチームリーダーの栗原弘司様にお話を伺いました。

ソルダーレジスト(SR)で世界トップクラスのシェア

御社の事業内容について教えていただけますか?

太陽インキ製造株式会社は、エレクトロニクス業界に向けた化学品の開発・製造・販売を主に行っている会社です。太陽ホールディングスグループの一員で、本社は埼玉県にあります。国内の製造拠点は本社工場と北九州事業所、そして営業拠点は国内では関西営業所(京都)があり、海外では韓国に太陽インキプロダクツがあります。
北九州事業所では、ソルダーレジスト(SR)という液状インキとドライフィルムを生産しています。ソルダーは「はんだ」、レジストは「耐える」という意味があり、ソルダーレジストは、高熱のはんだにも耐えられる部材です。
実際にどんなところに使われているかというと、パソコンとかスマートフォンの中に、緑色の板が入っていますよね。その緑色の部材が当社で生産しているSRです。

製品を一貫生産できる新拠点として、北九州事業所を開設

北九州市に拠点をつくることになった経緯について教えてください。

2013年ごろに、事業継続計画(BCP)を策定したことが発端です。SRには一般品と高機能品があり、一般品は海外でも生産していたのですが、高機能品は本社でしか生産していなかったんですよ。一カ所だけでは災害があったときのリスクが大きいため、新しい生産拠点をつくることになりました。
また、SRには液状のインキとドライフィルムの2種類あるのですが、当時は液状インキを当社でつくり、ドライフィルムの加工は協力会社さんに依頼していました。外注すると納品までに時間がかかるので、お客様の満足度を上げるために、社内で開発と生産ができるよう検討していました。ドライフィルムは厚みが均一で、張り付ければ完成するため、お客様の工程負荷を低減させるというメリットがあります。ドライフィルムの需要が高まっていることから、社内で加工技術を育てたいという思いもありました。
そこで、まずは埼玉の本社でドライフィルムの開発試作を始め、技術のノウハウを蓄積してから、北九州で高機能タイプの液状インキとドライフィルムを一貫生産できる工場を稼働しました。

少ない災害リスク、アジアの玄関口、行政支援の3つが決め手

なぜ北九州市を拠点に選ばれたのでしょうか?

新しい生産拠点は、地震や台風などの災害が少ない場所にしたいと思い、日本全国を見て回りました。その中でも、北九州は一番災害が少なそうだったんです。
私たちの製品は海外の販売比率が非常に高く、特に韓国、中国、台湾が大きな市場となっています。北九州はこれらの国に近く、空港と港があることも決め手になりましたね。
そして3つめの理由が、行政と地元企業さんの支援が非常に良かったことです。県や市から補助金をいただくことができ、グリーンアジア国際戦略総合特区に指定されているため国からの税制優遇も受けることができました。政令指定都市ということで、市役所に行けば建設や消防などの窓口も一本化されていて、打ち合わせも便利でした。

八幡西区を選んだのは、工業用地でありながら黒崎駅前という利便性のある土地を、三菱ケミカル株式会社様からお借りすることができたからです。社員にとっては通勤も便利で、かつ、各種インフラを活用させていただくことで、初期投資が抑えられるというメリットもありました。

北九州事業所は少数精鋭の多能工集団

北九州事業所ではどんな方たちが働いていますか?

北九州で採用した社員を中心として、40名程が働いています。元気で明るい方が多いですね。
竣工する半年前には、地域限定社員として採用し、本社で研修をした後に仕事をスタートしました。北九州事業所は少数精鋭で、全員がすべての工程を覚え、多能工として活躍しています。

交通の便が良く、アジア向けの営業活動がしやすい立地

3年間操業してみて、実感しているメリット、デメリットは何ですか?

実感しているメリットは、北九州を拠点に選んだ理由と同じです。3年間、災害で操業が止まったことは一度もありません。製品は門司港から船便で輸出できますし、空港が近いためアジアのお客様に来ていただいたり、訪問したりするのも非常に便利です。
行政からは、高校、高専、大学の先生を紹介してもらうなど、採用活動にも協力していただいています。暮らすうえでも、食べ物はおいしいし、交通の便が良く、住みやすいまちですね。
デメリットというよりも課題は、北九州での当社の認知度です。太陽インキ製造はBtoBの会社なので、一般的にあまり知られていません。埼玉ではコマーシャルをしているので少しは知っていただいていますが、こちらではまだまだです。会社の認知度を上げて、採用活動に結び付けていきたいと思っています。

さらなる飛躍を目指して増産体制を整え、成長市場でチャンスをつかむ

今後の目標や抱負を聞かせていただけますか?

2015年10月に竣工して以来、工場は順調に稼働しています。将来、ドライフィルムの需要が伸びることを見越して、工場の増設を始めました。顧客ニーズに応えるためにも、北九州事業所での増産体制を整えているところです。2019年3月までに増設を終え、社員の採用も積極的に行っていきます。
社員の育成にも力を入れ、事業所内で部署間の異動を行い、いろいろな経験を積めるようにしていきます。さらに仕事のスピードとコミュニケーションを高め、協業を進めていきたいと思っています。
現在、電子部品・エレクトロニクス業界の市場は大きく成長を続けており、当社を取り巻く環境は日々進化しております。この広がるチャンスを活かし、あらゆる技術を高めて革新的な製品を生み出し、楽しい社会の実現を目指します。
今後の太陽インキ製造株式会社 北九州事業所にご期待ください。


<プロフィール>
栗原 弘司(くりはら・こうじ)
太陽インキ製造株式会社 取締役
北九州事業所長 兼 開発推進プロジェクト チームリーダー

1988年太陽インキ製造株式会社(現太陽ホールディングス㈱)に入社。製品開発部、技術部、その後台湾太陽油墨(股)公司、太陽油墨(蘇州)有限公司など海外拠点立ち上げに従事し、生産本部本部長兼製造部長を経て2015年より北九州事業所長、2017年太陽インキ製造株式会社取締役に就任し、現職に至る。

<会社概要>
太陽インキ製造株式会社
北九州事務所:北九州市八幡西区黒崎城石1番1号
本社:埼玉県比企郡嵐山町大字平澤900番地

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